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選食力を身につけよう!

(その17)-「マゴワヤサシイ」が理想の食材―低GI・高N/Cレート食材- 

NPO日本食育インストラクター・食育実践プランナー
広島市歯科医師会顧問
小松 昭紀

「マゴワヤサシイ」は生活習慣病予防に役立つ食事作りの合言葉


 「マゴワヤサシイ」は、食品研究家の吉村裕之医学博士が提唱しているバランスのとれた食材の組み合わせを表したもので、昔ながらの日本の伝統食にあるおなじみの食材ばかりで、それぞれに高い効果があります。この組み合わせで食事をすると、必須栄養素がバランスよく摂取できます。穀物に限らず普段から「栄養の濃いもの」を選んで食べるようにすると、最終的に「マゴワヤサシイ」の頭文字で代表される食材に自然と行き着くのです。以下、それぞれの食材について見て参りましょう。

「マ」= 豆類、納豆、豆腐、味噌などの大豆製品


 大豆、小豆、グリンピース、白いんげん豆などの豆類は良質なタンパク質の摂取源となるだけでなく、肉に比べて脂肪が少なく、カルシウムマグネシウムカリウム亜鉛ビタミンB群食物繊維が豊富です。必須脂肪酸のリノール酸α‐リノレン酸や、親水性脂質のレシチンが含まれています。レシチンは血管内でコレステロールが固まらないようにする働きがあるため、動脈硬化を予防する成分として注目されています。また、内臓への脂肪の蓄積を防ぎ、肥満予防や脳の老化防止効果も期待されています。
 また、フィトケミカルの1つであるイソフラボンも豊富に含まれており、活性酸素に対する抗酸化作用が期待でき、体内のホルモンバランスを回復させて前立腺がんや乳がんの抑制効果もわかっています。イソフラボンは女性ホルモンと似た働きをするため、更年期の女性にお勧めです。1日に必要な大豆イソフラボンを補うためには、納豆なら1パック豆腐なら1/3丁豆乳なら100ccがそれぞれ目安です。大豆製品は、1日に1品は摂り入れたいものです。大豆以外にも、いろいろな種類の豆類を毎日の食事に積極的に取り入れましょう。
 また、納豆や味噌などの大豆発酵食品には、タンパク質や脂質、炭水化物の3大栄養素すべてを分解する酵素が含まれているため、消化にも負担をかけません。このような発酵食品には、発酵することで生まれた次のような5つの長所があります。

(1)栄養素が分解され、吸収しやすくなる―食材の分解が進み、タンパク質はアミノ酸、炭水化物はブドウ糖などの単糖類、脂肪は脂肪酸という小さな分子にまで分解され、胃や腸での消化吸収を助け、速やかに吸収することができます。味噌や納豆では大豆のタンパク質が分解されサポニンができ、これによっても吸収効率がUPします。
(2)栄養価がアップする―食材が分解される過程で乳酸菌や抗酸化作用のあるビタミン、微量成分などのフィトケミカルといった体に有益な成分が引き出されます。
(3)微生物の作用で新たな栄養素が生まれ、新たな効能をもたらす―納豆菌は発酵の過程で代謝を促進したり、細胞分裂に作用するビタミンB12を10倍に増やします。さらに、血圧の上昇を抑制するペプチドや血栓を溶解するビタミンKなどの栄養素も発酵によって作られ、コレステロールの低下や中性脂肪の抑制など、大豆にはなかった効能が生まれます。
(4)食品の保存性を高める―発酵が進むと乳酸が作られますが、乳酸の数が増えて一定の濃度(飽和濃度)に達すると、自動的に乳酸菌の発酵が止まります。この状態になると、食材を腐敗させる菌が入り込む余地がなくなり保存性が高まります。
(5)食品をおいしくする―発酵することで、食品に含まれる栄養素はアミノ酸や単糖類、脂肪酸に分解され、食材が持っている本来のうま味や風味を引き出します。

 納豆には9種類すべての必須アミノ酸をはじめ、約20種類のアミノ酸が含まれています。しかもそのアミノ酸の97%が有効に使われるため、非常に優れたタンパク源といえます。
 逆に炭水化物や脂質が少ないのも特徴で、カロリーが低いのに満腹感が高い食品です。
 納豆に含まれるメナキノンー7は、体内でビタミンK2に変わります。ビタミンK2は、骨粗鬆症の予防に効果があると注目されている栄養素です。味噌やチーズなどの発酵食品に含まれる栄養素ですが、納豆には飛び抜けて多く含まれています。ビタミンK2には、血液中のカルシウムを骨に運び、骨に結合させて強化する働きがあるので、骨粗鬆症が予防できるとされています。また同時に血液中のカルシウムが減るので、動脈硬化層の石灰化が防止されます。
 納豆菌が作り出す納豆オリジナルの酵素ナットウキナーゼには、血栓を予防し、血液循環をスムーズにする働きがあり心臓を守ります。心臓病の薬(ウロキナーゼ)にとってかわるほどの高い効能を持っています。また、ナットウキナーゼによって血液循環がよくなると、酸素や栄養が体の隅々まで行き渡ることで、体全体が活性化、関節痛の緩和や脳機能の向上にもつながり、さらにがん細胞は酸素が少ない状態で育つため、がん細胞が弱体化します。さらに、最近の研究でナットウキナーゼが神経細胞への老人斑の沈着を抑制する効果も認められ、認知症の原因となるアルツハイマー病の予防・改善につながるのではないかと期待されています。
 納豆のネバネバを作り出すムチンは、タンパク質と多糖類が結合した成分で、オクラや山芋などにも含まれています。胃壁に膜を作ることで胃粘膜を保護し、また、食後の血糖値の急激な上昇を抑制したり、血液中のコレステロールを低下させる作用があり、糖尿病や脂質異常症、動脈硬化、肥満の予防効果が期待されています。
 また、プラスミンは血液を凝固させるタンパク質を分解する酵素ですが、年をとると減少します。この働きをナットウキナーゼで補うことで、心臓病や脳卒中のリスクが軽減されます。この他にも、血液中のコレステロール値をコントロールして動脈硬化を予防したり、肝臓のコレステロールを分解して脂肪肝を防ぐレシチンや、強い抗炎症作用を持ち免疫力を高めるポリアミンなども含む納豆は、健康長寿を目指す人にとって心強い味方です。
 味噌の主原料は大豆と麹。大豆の割合が多いのが赤味噌。このため赤味噌には、大豆由来の栄養素イソフラボンサポニンがより多く含まれています。また、発酵由来の成分、中性脂肪を減らすペプチドや褐色の色素メラノイジンなど、どれも抗酸化作用があり代謝を上げる効果もあります。エネルギー代謝が上がることで、食後に増える血液中のブドウ糖が効率的にエネルギーとして消費され、血糖値の急上昇を抑えることができます。赤味噌は朝に食べたいアンチエイジング食品です。
 一方の白味噌は、日本人に親和性が高いといわれている植物性乳酸菌を多く含む食品の一つです。これは発酵によって麹菌が生み出した糖が乳酸菌のエサとなるためです。白味噌スプーン1杯には、ヨーグルト100gと同じ量の乳酸菌が含まれています。
 白味噌に豊富なGABAは、脳の興奮を抑える唯一の神経伝達物質です。通常GABAは、体内で十分な量が作られています。しかし強いストレスにさらされると大量に消費され不足しがちになります。枯渇すると空腹、不眠、イライラなどが引き起こされます。白味噌には、ストレス軽減や安眠などの効果が期待できます。そのため白味噌は夜に食べるのが効果的といわれています。
 朝食で赤味噌の味噌汁を摂ることで、エネルギー代謝を上げて1日を活動的に送り、夕食で白味噌の味噌汁を摂って、昼間のストレスを軽減し、心地よい眠りを促すのがいいでしょう。麹は、60℃以上の高温の環境で急激に減少しますので、味噌汁を作るときは調理の最後に入れるなど、熱を加えすぎないように注意しましょう。また、味噌は塩分も多く含んでいるので、一度にあまり多く使わないように注意しましょう。血圧が高めの人は、減塩味噌などを上手に利用しましょう。

「ゴ」= ゴマやナッツなどの種実類


 白ゴマ・黒ゴマなどゴマ類、ピーナッツ、クルミなどのナッツ類は天然のサプリメントとも呼ばれ、多くの蛋白質食物繊維マグネシウムカルシウム亜鉛などのミネラルをバランスよく含んでいます。また、抗酸化作用に優れているビタミンEも豊富です。さらに、血液中のコレステロールや血糖を減らすオメガ‐3系不飽和脂肪酸のα-リノレン酸も含まれており、特にクルミには豊富で、動脈硬化を予防・改善し、脳梗塞や狭心症、心筋梗塞など重篤な病気を防ぐ効果があります。また、アレルギーを抑制する働きもあるとされています。
 ゴマの成分の約半分は多価不飽和脂肪酸です。なかでもオメガー6系の一種であるリノ-ル酸を多く含みます。リノール酸には血液中のコレステロールを減らしたり、血圧を下げる作用がありますが、リノール酸は酸化されやすく、体内では活性酸素の酸化ストレスによって過酸化脂質になり、肺がん、乳がん、大腸がん、前立腺がんなどを促進するといわれており、過剰になるとがんの他、アレルギー症状や心疾患、老化を促進し、免疫力を低下させたりしますので摂り過ぎには注意が必要です。
 ゴマに含まれる抗酸化作用に優れたゴマリグナン類(セサミン、セサモール、セサミノールなど8種類以上)はアンチエイジング成分として脚光を浴びています。なかでも、セサミンは強力な抗酸化作用をもち、肝機能の強化や動脈硬化の予防に役立つといわれています。細胞には脂質を分解する物質が存在していますが、セサミンはこの物質を活性化して脂質の代謝を高めることがわかっています。ゴマ油が同じオメガー6系の紅花油やひまわり油などの食用油脂より酸化しにくいのは、セサミノールの抗酸化作用によるものです。
 ゴマは皮の色で大きく白ゴマ、黒ゴマ、金ゴマに分けられますが、成分に大きな違いはありません。一般的には白ゴマの方がゴマリグナン類の量が多く、黒ゴマにはタンニン系のポリフェノールが含まれていて、最も抗酸化作用が強いのはアントシアニンなどの色素成分を多く含む黒ゴマで、免疫力を高める作用があるともいわれています。
 クルミなどにはα‐リノレン酸が比較的多く含まれていますが、種実類は総じてリノール酸が多い点は否めません。ゴマなどを普通に食べる分には全く問題はありませんが、その他のナッツ類も適量にとどめるのが賢明です。特に、安価で売られているミックスナッツのようなおつまみの類は、製造過程で質の悪い油が用いられているものも多いため注意が必要です。
 ゴマ以外で積極的に摂り入れたいのは、フラックスシード ミール(亜麻の実)です。α‐リノレン酸リグナンを豊富に含む非常に優れた食品です。リグナンはポリフェノールの一種で、強い抗酸化力と炎症反応を軽減する働きがあり、また腸内細菌により女性ホルモンのエストロゲンと同様の働きを持つ成分に変わるので、骨粗鬆症の予防にも有効とされています。
フラックスシード


「ワ」= わかめやこんぶなどの海藻類


 わかめ、こんぶ、ひじき、もずく、のりなどの海藻類はカルシウムマグネシウムカリウムヨウ素亜鉛食物繊維も豊富です。オメガ-3脂肪酸であるα‐リノレン酸も、わずかながら含まれています。ヨウ素は、代謝をアップする甲状腺ホルモンの成分となります。また、フィトケミカルの一種でがん予防効果が注目されているフコキサンチンも含まれています。これは海藻類に含まれる褐色色素のカロチノイドの一種で、ガン細胞を死滅させるナチュラルキラー細胞を活性化する働きも認められています。さらに海藻に多いヨウ素との相乗効果で、乳がんの予防に有効であるとされています。
 海藻類には、わかめ、めかぶ、もずく、ひじき、こんぶなど様々ありますが、いずれもヌルヌルとした質感が特徴です。そのヌメリの元は、フコイダンアルギン酸で、海藻多糖類と呼ばれる水溶性食物繊維の一種であり、海藻だけに含まれる独特の成分です。まずフコイダンには、免疫細胞そのものの数を増やし活性化させる働きがあり、がん細胞を攻撃し増殖を抑制するといわれています。また、胃の中のピロリ菌を取り込んだまま排泄されることで、ピロリ菌の除去に一役買っています。さらに納豆などのネバネバ成分と同様、インスリンの急上昇も防ぎます。そのためフコイダンには、肝機能の向上、血圧上昇の抑制、免疫力のアップ、抗アレルギー、抗がん作用などがあるとされています。
 またアルギン酸には、血中コレステロールの定着を抑制して血流を促進し、血液サラサラ効果があるといわれています。さらに、フコイダンやアルギン酸は水溶性食物繊維としても優れた効果を発揮します。これらは、腸内に摂り込まれるとゲル状になり、余分なコレステロールやナトリウムを抱き込んで体外に排出します。また、こんぶに含まれるカリウムが利尿作用を促し、体内のミネラルバランスを調整し、さらには、わかめに含まれる緑色の色素成分・クロロフィルが、腸内の有害物質をつかまえて体外に排出してくれるデトックス効果が高いこともわかっています。 
 また、こんぶの香りやうま味成分の一つであるグルタミン酸はアミノ酸の一種で、脳の機能を妨げるアンモニアを捕らえてグルタミンに変えます。また、尿の排泄を促進させてアンモニアを体外に排出します。このグルタミンは、グルタミン酸を増やしたり、細胞の柔軟性の維持、エネルギー代謝や窒素代謝に関わり、脳の活性化や筋肉の強化、肥満予防に効果があります。
 わかめやひじきなどの海藻類は、ときに“海の緑黄色野菜”と呼ばれますが、それは緑黄色野菜同様に、色素のもとであるカロテノイドの一つβ‐カロテンが多く含まれているからです。にんじんやかぼちゃなどの野菜と同じ抗酸化ビタミンで、体内で必要量のみビタミンAに変わり、免疫力アップに貢献してくれます。体内に活性酸素が増殖すると、体は酸化して老化が進むだけでなく、生活習慣病をはじめ、発がんを促すこともあります。抗酸化作用の強い海藻を積極的に摂取し、病気の元凶となる活性酸素を体内から取り除く習慣をつけましょう。頼りになる海藻類は使い勝手に優れているのも魅力の一つです。生のままで食べても、加熱をしても栄養分に変化はありません。わかめは生のタイプでも乾物でもOK、常備して日々の食事に活用したいものです。特に、ヒジキの栄養的な価値は非常に高く、積極的に摂りたい海藻の一つです。

「ヤ」= 野菜類と果物


 野菜は全般にカリウムが多く、またビタミンA、C、Eやβ‐カロテンなど機能性成分の宝庫です。細胞の活性化には欠かせない各種ビタミン、ミネラル、フィトケミカルをトータルで補給できる食材の代表格です。そのうち、100g中に600?以上のβ‐カロテンを含む野菜は緑黄色野菜と呼ばれ、ホウレン草やカボチャ、ニンジンなどの色の濃い野菜です。β‐カロテンは体内でビタミンAに変わり、活性酸素に対抗します。また、βーカロテンは、この抗酸化作用だけでなく、分裂増殖する性質から本来の細胞の働きへ戻す作用(分化促進作用)を持っています。油に溶ける性質があるため、よく「油で炒めて食べると吸収がよい」などと言われますが、ただでさえ摂り過ぎの傾向にある脂質(特にリノール酸過多の植物油)の摂取量をむやみに増やす必要はありません。要は脂質と一緒に摂ればよいわけですから、種実類を取り入れたり、フラックスオイル(亜麻仁油)を適量用いたりする程度で十分です。必ずしも油でコーティングしないといけないわけではありません。
 また、緑黄色野菜以外の野菜は淡色野菜といいます。タマネギやニンニク、キャベツ、レンコンなどです。淡色野菜に含まれるフィトケミカルにも免疫力を高める効果があることが確かめられ、最近注目されています。いずれにせよ緑黄色野菜も淡色野菜も、量だけでなくさまざまな種類のものをバランスよく摂りたいものです。
 野菜類の栄養価は、時間の経過とともに損なわれます。一般的に野菜類の栄養価は、芋類やかぼちゃなどでんぷん質(炭水化物)の多いものはエネルギー源としての価値があり、その他のものはビタミン、ミネラル、食物繊維、フィトケミカルなど、動脈硬化やがん予防などに大きな役割が期待されています。この有益な働きを拡大解釈して、野菜だけをたくさん食べればよいと思っている人もいますが、ただ、野菜が持つ成分は、食べ物から得た三大栄養素を体内で潤滑に燃焼させ、体の組織と細胞すべてに必要なものを合成しながら供給する過程に欠かせない名脇役ともいえるのです。いろいろ取り混ぜて1日350g以上の摂取がお勧めです。野菜だけをたくさん食べるのではなく、たんぱく質などの栄養素と一緒に摂ることを心掛けたいものです。魚類や肉類と野菜、豆腐と野菜、卵と野菜など、たんぱく質源と組み合わせた1皿を毎日の献立に加えていただきたいものです。目安は、たんぱく質源と同じ量の野菜を付け合わせとして添えることです。

「サ」= 魚類、特に青背魚(アジ、イワシ、サンマ、サバなど)


 魚類はセレン亜鉛といったミネラルや、EPA(エイコサペンタエン酸)DHA(ドコサヘキサエン酸)などのオメガ-3系不飽和脂肪酸を供給してくれます。魚介類は、オメガ-6とともに摂り過ぎが懸念されている飽和脂肪酸が少ないうえに、すべての必須アミノ酸を含む良質のタンパク源でもあります。ビタミンB群亜鉛セレンなども豊富で、イワシなど小さな魚をまるごと食べると、骨に含まれているカルシウムや内臓に含まれる各種ビタミン・ミネラルも摂ることができます。ただし、環境汚染で海や川が重金属や化学物質に汚染されている場合もあります。マグロのような大型魚はできる限り避け、まるごと食べられる小型の魚を多く摂るようにするとよいでしょう。また、養殖魚にも多種多様な汚染の危険があるので、なるべく天然の魚を食べるようにしましょう。
 イワシやサバ、サンマなどの青背魚には、オメガ-3脂肪酸のDHA、EPAが豊富に含まれています。それらには細胞を活性化させて衰えを防ぐ働きがあり、アトピー性皮膚炎や喘息などのアレルギー性疾患、心臓病、さらにはがんなどのさまざまな病気を予防・改善する効果や、脳神経の伝達をスムーズにする働きが期待されています。
 DHAやEPAには、血液中のLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪を減らし、血液中の余分なLDLコレステロールを肝臓に回収する役割を担っているHDL(善玉)コレステロールを増やす作用があります。また、出血時に血液を固まらせる作用のある血小板の凝集を抑制して血栓ができにくくしたり、血栓を溶かす働きもあります。さらに、DHAには血圧を下げる作用、EPAには血管を拡張する作用があり、これらの作用によって、動脈硬化を予防・改善して、脳梗塞、狭心症や心筋梗塞など動脈硬化性の重篤な病気のリスクを軽減します。
 脳は、神経細胞であるニューロンからニューロンへと情報を伝達することで、生命活動や精神活動をコントロールしています。このニューロンの先端にはDHAが含まれていて、ニューロン同士の伝達にかかわっていると考えられています。DHAが不足すると情報の伝達に支障を来すことから、神経組織の機能維持に重要な役割を果たしていると考えられています。乳児では、DHAが脳の発育に重要な役割を担っていて、欠乏すると発育に障害を生じるとされ、一方、高齢者では記憶障害、学習能力や視力の低下に関わっていると考えられおり、アルツハイマー型認知症の改善に役立つという研究報告もあります。
 サケの身が赤いのは、カロテノイドの一種でキサントフィル類のアスタキサンチンという色素成分によるものです。エビやカニの甲羅にも含まれ、強力な抗酸化作用を持っていて、その効力はビタミンEの約500倍、リコピンの数倍といわれています。それ故、アンチエイジングや美肌に効果があるとされています。さらに、アスタキサンチンは、認知症の一番の原因であるアルツハイマー病の予防に有効ではないかと期待されています。脳には、血流に乗った有害物質の侵入を防ぐために血液脳関門がありますが、そこを通過できるのは、脳のエネルギー源となるブドウ糖や酸素、細胞膜を形成するコレステロールなど、ごく一部の成分に限られています。アキスタキサンチンはこの血液脳関門を通過できるのです。それ故、アキスタキサンチンは、脳の神経細胞の酸化を防いでアルツハイマー病の発症リスクを軽減することができるのではないかと考えられています。
 また、タコやイカなどの軟体動物や貝類には、心臓や肝臓の働きをサポートしたり、余分なコレステロールを体外に排出したりする成分のタウリンも豊富です。タウリンはアミノ酸の一種で、魚ではサンマやカツオの血合い、マグロの赤身などに豊富に含まれています。タウリンは疲労回復に効く成分ですが、ほかにもさまざまな作用を備えています。交感神経抑制作用があり、食塩の摂りすぎによる高血圧を改善、心筋の収縮力を高め心臓から送り出される血液量を増やします。さらに、肝臓の解毒作用を強化したり、肝細胞の再生を促進したり、インスリンの分泌を促進して高血糖状態を改善すると考えられています。

「シ」= しいたけなどのキノコ類


 しいたけ、しめじ、えのきなどキノコ類には、他の食品にはあまり含まれないような貴重な物質が含まれています。フィトケミカルの一つであるβ‐グルカンなどの多糖体が多く、免疫力強化やがん予防に効果的といわれています。ほかにも、キノコキトサンビタミンB群ビタミンDカリウム食物繊維などが多いのも特徴です。食卓では脇役に回ることの多いキノコ類ですが、低カロリーで微量栄養素が豊富という点では、野菜に負けないくらい優秀な食材ですので意識して摂るようにしましょう。これまでは、きのこといえばダイエットに不可欠な低カロリー食材としての認識が強く、栄養面ではそれほど重要視されてきませんでしたが、昨今、特に注目を集めているのが、きのこ類独特の成分であるβ‐グルカンです。
 グルカンとは、ブドウ糖を含む腸で消化されにくい不消化性多糖類で、食物繊維の一種です。グルカンは大きく分けて、α‐グルカンとβ‐グルカンに分類されます。α‐グルカンには、うるち米などに含まれるアミロース、肝臓でブドウ糖から合成されるグリコーゲン、でんぷんを加工したデキストリンなど。一方、β‐グルカンはキノコに多く含まれていて、免疫力を高めてくれます。
 人間の体には約2兆個の免疫細胞が存在しますが、そのほとんどが白血球です。白血球は血液やリンパ液の流れに乗って全身を駆け巡ります。体外から侵入したウイルスや細菌などの病原菌、体内に発生したがん細胞などを攻撃して排除したり、無害化します。白血球は、働きの違いによってリンパ球、単球(マクロファージ)、顆粒球に分類されます。さらに、リンパ球には、ナチュラル・キラー(NK)細胞、B細胞、T細胞(キラーT細胞、ヘルパーT細胞など)があります。顆粒球には、好中球、好酸球、好塩基球があります。それら免疫システムの主役は白血球です。病原体やがん細胞などの異物を見つけると、まずNK細胞やマクロファージ、好中球が異物を無差別に攻撃します(自然免疫系)。これで排除、無害化できなかった異物に対しては、異物の情報を収集しB細胞、ヘルパーT細胞、キラーT細胞が戦略的に攻撃を仕掛けます(獲得免疫系)。
 こうした免疫システムの一連の流れの中で、β‐グルカンが作用するのは、はじめに異物を取り込んで、その情報をヘルパーT細胞に伝達する役割を担うマクロファージです。β‐グルカンは、腸の粘膜にある受容体をとおしてマクロファージを刺激して活性化し、異物の正確な情報を収集することができるようになり、精度の高い情報をヘルパーT細胞に伝えることで免疫力をアップし、病気の発症を抑制します。そのパワーはがん細胞をも抑制するほどといわれています。なかでも強力な効果が期待されているのが、しいたけ(ビタミンC、レンチナン)、まいたけ(Dフラクション)、えのき(トレハロース、ナイアシン)の3種です。
 しいたけに含まれるβ‐グルカンの一種のレンチナンには、抗がん作用があることが証明されています。そのほかフィトケミカルの一種であるエリタデニンは、LDLコレステロールの排泄を促進し、脂質異常症や動脈硬化を予防・改善し、血圧降下作用も認められています。
 まいたけには、β‐グルカンの含有量が多いので、積極的に摂りたいきのこです。特に多く含まれるD‐フラクションは、β‐グルカンと同様に免疫力をアップする作用があり、がんの発生を予防する効果があるという報告があります。また、まいたけ固有の成分のX‐フラクションには、血液中のコレステロールや血糖をコントロールする作用があり、脂質異常症や糖尿病、動脈硬化の予防・改善効果が期待されています。
 えのきには、2つのブドウ糖が結合した二糖類のトレハロースが含まれ、保水力に優れ肌の潤いを保ちます。また、ナイアシンは血行を改善して冷え性、頭痛、肌荒れなどを解消します。また、脂質や糖質の代謝、性ホルモンやインスリンの合成の補助、肝臓でのアルコール分解の促進など多彩な働きをしています。
 キノコキトサンは、きのこに特有の成分で、β‐グルカン、キトサン、フコース、アラビノースなどの複合体です。構成成分が相互に影響し合いながら相乗効果を生み出します。特に、腸からの脂質の吸収を抑制することで、血液中のLDLコレステロールや中性脂肪を低下させて脂質異常症を予防・改善し、動脈硬化の発症を抑制します。
 きのこは不溶性食物繊維としての効果も期待が大です。不溶性食物繊維とは水に溶けず、スポンジのように水を吸収するのが特徴で、数倍から数十倍に膨らみ、腸壁を刺激して腸の蠕動運動を盛んにして便通を促し、便秘を予防・改善します。便秘を解消することで腸内の老廃物や有害物質が体外に排出され、腸内環境を健康に維持してくれます。腸内環境が整うと乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌が優勢になり、その結果、腸に存在する免疫細胞が活性化されて免疫力がアップします。健康は腸から始まります。腸内がきれいであればこそ、必要な栄養素も上手に摂り込めるというものです。
 きのこを干すと、きのこ本来のものに加えて、新たなうま味や栄養素がプラスされます。干すことで腸からの吸収を助けるビタミンDが凝縮されます。また、天日干しすると脂質の一種であるエルゴステリンがビタミンDに変換されるので、全体のビタミンDの含有量が増加して、骨粗鬆症の予防に働きます。さらに、きのこの細胞壁に存在するうま味成分のアミノ酸などが凝縮されることによって、味や香りが増します。干したきのこは、胃や腸で水分を吸収して膨張するので、満腹感が得られやすく食べ過ぎによる肥満を予防してくれます。また、腹持ちがいいのでダイエットに最適です。

「イ」= イモ類


 ジャガイモ、長イモ、サツマイモ、里芋、山芋などイモ類は炭水化物が主成分で、カリウムビタミンCビタミンEβ‐カロテン食物繊維のよい摂取源となります。ビタミンCをでんぷんで守り、加熱しても損なわれないのも特徴です。家庭ではジャガイモを利用する機会が圧倒的に多いと思いますが、サツマイモやサトイモ、ヤマイモなどは、ジャガイモでは摂れない栄養素や物質を含んでいるため、特定の種類に偏らないで食べるとよいでしょう。総じて、皮や皮の近くにビタミンやミネラルが集中しているため、ジャガイモやサツマイモなどは、農薬などの心配がないものを皮ごと食べるようにすると、貴重な栄養素が丸ごと摂れます。特に山芋は、消化が良く、ビタミンやミネラルも豊富で、漢方では薬用野菜として知られています。すりおろしたり、短冊型に切って生でたくさん摂りましょう。
 長イモには、そのヌルヌル成分である水溶性食物繊維のムチン亜鉛で体調不良を治す効果が認められています。ムチンは、胃の粘膜を覆って保護したり、タンパク質の吸収を促進します。また、腸からの糖質の吸収を緩やかにする働きがあり、食後の血糖値の急激な上昇を防いで高血糖状態になることを防ぎます。
 また、消化を促進してエネルギー代謝を高める多種類の分解酵素が含まれています。まず多種類の消化酵素が胃腸の働きをサポートします。糖質分解酵素のアミラーゼが大根より豊富。でんぷんを分解する酵素のジアスターゼ、酸化還元酵素のカタラーゼ、そのほかウレアーゼオキシターゼなど、多種類の消化酵素が含まれています。このため消化を助け、代謝を早める効果が期待できます。
 また、ミネラルやビタミンも豊富です。特に亜鉛の含有量が多く、現在若者の間で増えている味覚障害の症状を改善する効果があります。亜鉛は量の差こそあれ、多くの食品から摂れます。このため本来は不足しにくい成分です。しかし食品添加物によって吸収が妨げられることがあるため、加工食品や外食が多いような食生活をしていると、不足しやすくなります。

 このように、精製度の低い穀物「マゴワヤサシイ」を上手に組み合わせ、これらの食材の持ち味を活かしてシンプルに調理することで、まさに“栄養の濃い食事”が実現できるわけです。“「マゴワヤサシイ」は生活習慣病予防に役立つ食事作りの合言葉”です。
 最近では、スーパーなどでも、「マゴワヤサシイ」を組み合わせたお弁当も市販されているようです(画像提供:広島駅弁当株式会社)。



穀物と豆は「黄金の食べ合わせ」


 体を構成するタンパク質の原材料として最低限必要なのは、9種類の必須アミノ酸です。それが穀物と豆を2対1の割合で食べ合わせるだけでほぼ無駄なく全部摂れてしまいます。
 しかも、同じ組み合わせでエネルギーのもととなる糖分とエネルギー化に必要なビタミンB群も摂取できますから、まさに「黄金の食べ合わせ」といえます。
 そこにたっぷりの野菜から食物栄養素、食物繊維、酵素、ミネラルなど、体の機能を高めるのに必要な要素を摂り込み、動物性の食品からしか摂り込めない栄養素を少量の動物性タンパク質で補います。さらに大事な要素である油脂類や海藻類なども忘れずに摂り込むことにより、非常にバランスのとれた組み合わせになります。

 このように、せっかくよい食べ合わせに気を配っても、調味料が化学的に合成された“まがいもの”では台なしになってしまいます。みそ、醤油、みりんなど、必ず伝統的な製法にのっとってつくられた“本物”を使うことがお勧めです。

食事改善の第一歩は、調味料から!


 どんなに体に良い食材を選んだところで、体に悪い調味料を使ったのでは意味がなくなります。調味料は品質の優れた「本物」を使うことです。“食事改善の第一歩は、調味料から”と言っても過言ではないでしょう。日々少量ずつではあっても、継続的に摂り続けていくものですから、調味料にはやはり細心の注意を払うべきだと思います。
 良質の調味料は素材の味を美味しく引き立たせ、味に深みを与えてくれます。そして何よりも、良質のものには天然の健康成分がたっぷり含まれています。ですから、それらの摂取が体の力を引き上げる手助けをしてくれるのです。

<本物の調味料を選ぶ上での注意点>
・ボトル等の裏側記載の原材料表示を確認する
 使用された原材料は、容器の裏面に使用量の多い順に記載されています。さらにその後に添加物等が、これも使用量の多い順に記載されていますので、購入の際には必ず確認しましょう。例えば、本物の醤油を作る原材料は、「大豆、小麦、塩、麹、水」だけです。
 それ以外の余計な物が含まれていれば、それはある種の”まがいもの”です。
・大瓶では買わない
 調味料はいつも使うものだからといって、割安の大きい容器のものをつい買いがちですが、新鮮さを保つためには、大容量はできるだけ避けて小さい容量の方を選ぶようにしましょう。瓶ものならば中瓶か小瓶を、また買い溜めもしないで、なくなったらその都度、製造日の新しいものを買い求めるように心がけましょう。
・大手メーカーのものよりも小さいメーカーのものを
 大手メーカーの商品は工場で大量生産され、流通ルートに乗せられて全国に運ばれます。それ故、保存料が添加されているものが多いので選ばない方が賢明です。小さいメーカーの方が、より本物に出合える確率が高いので、小さいメーカーのものを選ぶように心がけましょう。
・塩:精製された塩化ナトリウム95%以上の「精製塩」は避け、「天然塩」を。
・醤油:原材料に「脱脂加工大豆」とあるものは求めない。「天然熟成醤油」を。
・味噌:自然な「天然醸造」の「生味噌」を選び、味噌汁は60℃以上に温めない
・砂糖:精製された白い砂糖は使わない。
・みりん:砂糖の代わりには、原料が「もち米・米麹・米焼酎」の3つだけの「本みりん」を使いましょう。
・酢:原料が単一で、原材料表示にアルコールや添加物の記載がないもので、「純玄米酢」「純米酢」「純リンゴ酢」などを。

調味料については、次回に詳しく検討して参りたいと思います。

 

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