HOME > 食と安全 >選食力を身につけよう!(その20)-食物繊維・近年脚光を浴びる「第6の栄養素」-  
選食力を身につけよう!(その20)-食物繊維・近年脚光を浴びる「第6の栄養素」- 

NPO日本食育インストラクター・食育実践プランナー
広島市歯科医師会顧問
小松 昭紀


 食物繊維とは、人の消化酵素で消化されない難消化性炭水化物の総称です。体調を整えたり、生活習慣病の予防や治療に役立ったり、重要な生理作用があるということで近年脚光を浴びており、糖質、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルに次ぐ「第6の栄養素」とも呼ばれています。かつては“食物の残りカス”と考えられていましたが、生活習慣病の予防に役立つことがわかって注目されるようになりました。厚生労働省では、食物繊維、ビタミン、ミネラルをバランスよくとるために、1日に野菜350g、芋類100g、果物200gを摂るよう推奨しています。
 日本人の食物繊維摂取量は、第二次世界大戦後減少し続けています。原因は穀類、豆類の消費量が減少し、精製加工品の利用が増えたことにあるようです。毎日の食事に意識的に食物繊維を取り入れる必要性が求められています。

図-1 野菜摂取量の平均値の年次推移(平成18~28年、20歳以上)


 米飯を主食とする日本人は、もともと自然に食物繊維を口にしていました。1950年代半ばでは、成人の平均摂取量は1日当たり22gほどありました。ところが近年、米をあまり食べなくなる一方、肉類など食物繊維の少ない食品の摂取比率が高まり、1日当たり1415gと減少しています。若い世代の摂取量はとりわけ少なく、2030歳代の男性で1314g、女性で1213gにとどまっています。国が目標とする食物繊維の摂取量は、1日当たり20g30gです。
 食物繊維は芋類、豆類、キノコ類、海藻類などに多く含まれ、こうした食材を使ったメニューを選ぶといいでしょう。例えば、ヒジキの煮物なら小鉢(約10g)に56gの食物繊維が含まれています。納豆1パック(約50g)も45gと多く、よく推奨される食材です。
 また、食物繊維が多く含まれる野菜などは、一般的に固くてよく噛まないと食べられないものが多く、自然に咀嚼回数が増し、唾液分泌も多くなり、その分胃内での体積も増え、早く満腹感が得られ、結果的に食べ過ぎ防止、肥満防止に役立ちます。さらに顎の発達を促すとともに、脳に一定の刺激を与え脳の活性化にもつながります。

<食物繊維の主な生理作用>
 ・唾液の分泌を活発にする
 ・食物が胃に留まる時間を長くする
 ・胃での消化管ホルモンの分泌を促す
 ・小腸の蠕動運動を活発にする
 ・食物が小腸に留まる時間を長くする
 ・消化酵素や消化管ホルモンの分泌を促す
 ・食物が大腸を通過する時間を遅らせる
 ・ミネラルの吸収を促す
 ・腸内環境を整え善玉菌を増やす
 ・腸内細菌による脂肪酸の生産を促す



<食物繊維の種類とその働き>
 食物繊維は、水溶性食物繊維と、不溶性食物繊維2つに分けられ、それぞれ異なる特徴をもっています。
 水溶性食物繊維は、その名の示す通り水に溶けやすい食物繊維で、代表的なものに、果物に多く含まれるペクチンや、こんにゃくの主成分であるグルコマンナン、昆布など褐色の海藻の細胞壁の主成分であるアルギン酸ナトリウムなどが挙げられます。野菜、果物、豆類、大麦にも含まれる繊維で、繊維自体が水に溶けるため、体内に摂り込んだ食品が緩やかに移動し、小腸での栄養吸収を緩やかにし、糖の吸収速度も遅くなります。そのため、食後の血糖値の急上昇を抑制し、血中コレステロールを低下させるなどの働きをします。
 食物繊維は腸内でコレステロールを絡め取って排泄させるため、コレステロールの吸収を妨げる作用があります。とくに水溶性食物繊維にその作用が強いとみられています。コレステロールの摂り過ぎを予防するには、食物繊維が豊富な野菜や芋類、豆類、海藻、きのこなどを同時に食べるのが有効です。
 また、ビタミンCが胆汁酸合成を促進します。胆汁酸はコレステロールを原料として作られるので、これもコレステロール値を下げるのに一役買うようです。食事からコレステロールを下げるには、油ものを気にする以前に、食物繊維とビタミンCを確認しておく方がいいようです。
 不溶性食物繊維は水に溶けない性質をもつ食物繊維で、代表的なものに、穀類、豆類、野菜(根菜類)の細胞壁の主成分であるセルロースヘミセルロース、果物などに多く含まれるリグニン、甲殻類の殻の主成分であるキチンなどが挙げられます。有害物質の吸着や便秘の解消などの働きがあります。

1.水溶性食物繊維とその働き
1)食事成分の消化、吸収を緩やかにする
 高分子である食物繊維が胃の幽門部を塞ぎ、また水分を包み込んで粘度の高い溶液をつくるので、胃から小腸への食べ物の移動が緩やかになり、小腸でブドウ糖や脂肪がゆっくりと吸収されるようになります。そのため、急激な血糖上昇を防ぎ、インスリンの産生に負荷をかけないので、糖尿病、肥満予防に役立ちます。
2)腸肝循環する胆汁酸を減少させる
 腸に分泌された胆汁に含まれる胆汁酸は小腸で吸収されて肝臓に戻り、再び胆汁中に戻るという循環(腸肝循環)を繰り返します。食物繊維には、腸内のコレステロールや脂肪分を包み込んで体外に排出すると同時に、この胆汁酸も吸収して体外に排出する働きがあります。胆汁酸はコレステロールを材料にして作られるので、胆汁酸の減少は結果的に血液中のコレステロールを減らすことになり、高脂血症を予防します。
3)腸内細菌の種類と代謝を変動させ、大腸がんの予防効果も
 水溶性食物繊維は腸内細菌の栄養となるため、乳酸菌など善玉菌を増やし、腐敗菌を減らすので大腸がんの予防に役立ちます。
 その他、ピロリ菌の除菌時の抗生物質による副作用を防止する作用もあります。
4)有害物質の毒性を低下させる
 腸内細菌が水溶性食物繊維を発酵させ、大腸内を酸性寄りに保つため、アルカリ性の環境下で産生されやすい発がん性物質の毒性を軽減します。

2.不溶性食物繊維とその働き
1)消化管の働きを活発化
 腸管の蠕動運動を高め、便秘の解消に効果があります。
2)水分を含み、便の容積を増加させる
 不溶性食物繊維は、水分を包含し便のかさを増すので排便しやすくなり、便秘の解消に役立ちます。
3)発がん性物質の濃度を薄め、大腸がんの予防になる
 水分を含ませることで発がん性物質の濃度を薄めることから、大腸がんの予防になります。
4)大腸内容物の通過時間を短縮させる
 大腸の動きを活発化し、発がん性物質が大腸粘膜に長時間触れることなく速やかに排出されるので、これも大腸がんの予防になります。

<食物繊維には毒だし効果とともに、免疫力アップ効果も>
 食物繊維は副交感神経の働きである咀嚼・消化・排泄を活性化させる成分なので、食物繊維の豊富な食品を積極的にとると副交感神経が優位になって免疫力の強化に役立ちます。食物繊維は不消化多糖類(グルコースなどの単糖類が多数結合した物質の総称)で、体内では消化されません。そのため、食べると消化されにくい食物繊維を消化しようとして腸がすぐに動き始めます。大腸や小腸の腸管が活発に動くことで、副交感神経が活発に刺激されるのです。
 また食物繊維を摂ると血行が良くなって体温が上昇しますが、こうした体の変化も副交感神経優位の体調を作るのに役立ちます。逆に食物繊維不足になるとカゼをひきやすくなり、疲れやすい体調など、いわゆる抵抗力のない体をつくってしまうわけです。
 さらには食物繊維の腸管を動かす作用と、食物繊維が腸で水分を吸収して膨らむ性質が相乗効果となり、キノコ類や海藻類の多い食事を摂ると便のかさを増やして便通がよくなり、腸内環境の改善に役立ちます。便秘を解消するには適切な水分の摂取も必要で、1日1.5~2.0リットル程度は飲料水として飲むようにしましょう。
 一方で、食物繊維は腸内で発生する活性酸素の除去にも役立ちます。腸内には、老化や病気の原因となる活性酸素を産出するウェルシュ菌や大腸菌などの悪玉菌と、活性酸素を除去する乳酸菌などの善玉菌が存在しますが、食物繊維は悪玉菌が産出する活性酸素を吸着して素早く便として排出する働きがあります。
 このように腸管を動かし血行をよくして副交感神経を優位にする一方で、便通効果や活性酸素除去作用もあるので、食物繊維の多い食品の摂取は免疫力向上への貢献度が大きく、食物繊維不足は健康を害する原因になるのです。
 ただし、食物繊維の過剰な摂り過ぎは腸管を疲労させて動きにくくし、交感神経優位になって逆に便秘の原因になります。また、腸粘膜を損傷したり、下痢を招くこともありますので、食物繊維とはいえ、極端な摂り過ぎには注意しましょう。特に、胃腸の調子がすぐれない、下痢が続く、疲労が残るといった体調不良の場合には、野菜の繊維と硬さが刺激になりやすいので気をつけた方がいいでしょう。

<食物繊維の摂取不足は、糖尿病や肥満、高脂血症、がんなど、さまざまな疾患を引き起こす>
 これまで見てきましたように、食物繊維の摂取不足は、腸内の善玉菌が増えにくくなり、胃腸症状を起こしやすくなります。また、糖や脂肪の吸収が速くなり、そのため糖尿病や肥満、高脂血症、コレステロール血症、高血圧も起こりやすくなります。有害物質や腸内の栄養バランスも悪くなりがちで、がんの発症リスクも高くなります。
 大腸がんは日本でも急激に増えており、食生活の内容の変化が原因という説が有力です。大腸がんは、高タンパク、高脂肪、低食物繊維の食生活で起こる欧米型の病気と考えられています。
 食物繊維が多いと便の量が増え、発がん性物質の濃度を薄める効果があり、排便回数も増えて腸内に留まっている時間を短くするため、発がん物質が大腸粘膜に長時間触れることなく、速やかに排出されるため大腸がんの予防に有効と言われています。
 また、食物繊維は腸内細菌によってさまざまに分解・発酵され、腸内細菌のエネルギー源として利用されますが、最終的には炭酸ガス、水素、メタンガスなどが生成されます。重要なのは、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの短鎖脂肪酸や乳酸の生成で、これらは腸内の環境を酸性に改善します。大腸内が酸性になることで、アルカリ性の環境下で産生されやすい発がん物質の生成が抑えられます。したがって、食物繊維を摂って大腸内を酸性に保つことが望ましいという考え方が定着しつつあるようです。
 腸内細菌による分解の程度は、食物繊維の種類によって異なります。水溶性のペクチン、植物ガム、粘質物などはほぼ完全に分解され、不溶性のセルロースは僅か、へミセルロースは半分程度分解されるだけで、リグニンはほとんど分解されません。
 このように食物繊維はさまざまな種類があり、種類ごとに生理作用が異なるので、1日3度の食事で多種類の穀物や芋類、豆類、野菜類、果実類、海藻類などからきちんと摂るようにしましょう。米食なら玄米や胚芽米の方が望ましく、精白米の場合は押麦などを混ぜるとよいでしょう。パン食ならライ麦パンや全粒粉パンを選びましょう。それに加えて、芋類、豆類を多く摂るようにし、野菜は根菜、葉物などをとり混ぜ、海藻類も忘れないように摂るようにしましょう。食物繊維の1日の摂取量の目標値は、成人男性20g、成人女性17~18gです。

<食物繊維が豊富な食品の免疫パワー>
■キノコ類
 水溶性食物繊維が豊富な生しいたけ、ぶなしめじ、エリンギ、えのきだけ、まいたけ、なめこ、きくらげ、マッシュルーム、まつたけ
などのキノコ類が便通を促進し、また活性酸素除去作用で毒出し効果を発揮します。
 またキノコは不溶性食物繊維としての効果も期待が大です。カサを増した食物繊維が、腸内を刺激しながら進むことで便通を促し、腸内環境を健康に維持してくれます。健康は腸から始まります。腸内がきれいであればこそ、必要な栄養素も上手に摂り込めるというものです。

■海藻類
 わかめ、めかぶ、もずく、ひじき、昆布
などの海藻類は便を軟らかくする水溶性食物繊維の宝庫で、活性酸素の除去や便通を促進します。あの独特のヌメリ成分はフコイダンアルギン酸という水溶性食物繊維の一種で、フコイダンには抗菌作用や抗ガン作用など免疫強化作用があり、その能力は免疫細胞そのものの数を増やし活性化させ、がん細胞を攻撃し増殖を抑制するといわれるほどです。
 またアルギン酸のパワーも強力です。血中コレステロールの定着を抑制して、血流を促進し血液サラサラ効果をもたらします。さらに、低体温を改善する嬉しい効果も認められています。低体温になると血行が悪くなり、血流が滞ります。その結果、血液をドロドロにしてしまうので、できるだけ血流を促すような食事を心掛けることも、低体温を予防する上で重要です。
 フコイダンやアルギン酸は、水溶性食物繊維としても優れた効果を発揮します。これらは腸内に摂り込まれるとゲル状になり、余分なコレステロールやナトリウムを抱き込んで体外に排出します。常に老廃物を溜め込まない体をつくることによって、血糖値は低下します。コレステロールの分解を促進させて、体温向上の邪魔になる中性脂肪を低下させることにもつながります。
 また、昆布に含まれるカリウムが利尿作用を促し、体内のミネラルバランスを調整し、わかめに含まれる緑色の色素成分・クロロフィルが、腸内の有害物質を体外に排出するデトックス効果が高いことも分かっています。
 頼りになる海藻類は使い勝手に優れているのも魅力の一つです。生のまま食べても加熱して食べても、栄養分に変化はありません。

■穀類
 玄米や麦、雑穀のひえ、あわ、きび
には食物繊維が豊富で、腸を刺激して停滞した腸の働きを活性化し、副交感神経優位の体質づくりに役立ちます。穀類は自律神経のバランスも整えるので、意識して献立に取り入れると心身の健康状態が安定し始めます。

■野菜類
 ごぼう、菜の花、たけのこ、かぼちゃ、ブロッコリー、モロヘイヤ、オクラ
などはとくに豊富で、また乾物の切り干し大根やかんぴょうも食物繊維の宝庫です。これらの野菜には免疫力を強化する成分であるビタミンやミネラルも豊富です。

■果物類
 バナナ、リンゴ、イチゴ
などには食物繊維が多く含まれます。なかでもバナナは、便を軟らかくする水溶性食物繊維のペクチンや、整腸作用のあるオリゴ糖の働きにより腸内環境を改善させて免疫力に働く果物です。

<食物繊維の主な予防効果―食物繊維は体に不可欠>
■肥満予防
 食物繊維が多い食品は、よく噛むことが必要となります。すると必然的に食事をゆっくり食べることになり満腹感が得られやすく、食べ過ぎを防いで肥満予防につながります。

■糖尿病予防
 食物繊維を摂取することで、食品に含まれる糖質の消化・吸収速度が遅くなります。そのため、食後血糖値の上昇が緩やかになり、インスリンの急激な分泌を緩和して、糖尿病の予防につながります。

■動脈硬化予防
 食物繊維は脂質やコレステロールの吸収を抑える働きがあり、動脈硬化の予防に働きます。

■心筋梗塞予防
 心筋梗塞の大半が動脈硬化の進行で起こります。動脈硬化を予防することで、結果的に心筋梗塞の予防につながります。

■がん予防効果
 排便量・回数が増え、発がん性物質の濃度希釈効果と併せて、腸内細菌の働きで大腸内が酸性になることで、発がん物質の生成が抑制されます。

■便秘改善効果
 食物繊維というと多くの方が便秘改善をイメージされるでしょう。しかし、これまでの研究では、通常の食品から摂取する範囲では、食物繊維をたっぷり摂ったからといって、必ずしも便秘改善につながっていません。詳細は今後の研究が待たれますが、よく体を動かし、水分と食物繊維をしっかり摂ることが大切であることは間違いのないところです。

<食物繊維量は足りていません! 1日3食、いろいろな食品をバランスよく!>
 食物繊維は意識して摂らないとなかなか摂れません。充分に摂ることで生活習慣病の予防が期待できます。食物繊維のパワーを知り、摂取量アップを目指しましょう。
 食物繊維を多く摂るためには、基本的には「1日3食、いろいろな食品をバランスよく」ですが、具体的には、先ずは野菜を350gしっかり摂ることに加え、主食は精製度の低い穀物(玄米、雑穀米、ライ麦パンや全粒粉パンなど)を中心に毎食摂るようにしましょう。豆類は1日1皿、海藻類やきのこ類は、どちらかを1日1皿、芋類(こんにゃく類を含む)と果物はそれぞれ1日1回ずつ摂るように心掛けましょう。
 このように、意識しながら食事をすることで、食物繊維だけでなく、不足しがちなビタミン、ミネラルなども充分に摂れます。ぜひ、心掛けておきましょう。

<野菜だけでは目標量を達成できない>
 “野菜を食べているから大丈夫”と思っている人も安心はできません。確かに野菜は食物繊維が豊富ですが、野菜だけで充分な量を摂るのは難しいと思った方がよいでしょう。たとえば、1日350gの野菜を食べても、食物繊維は約10g。目標量の約半分に過ぎません。


※野菜を350g食べても食物繊維量は、目標の約半分しか摂れない!?

(野菜料理の組み合わせの1例)

料理名 野菜名 量(g) 食物繊維量(g)
 野菜サラダ  ブロッコリー 70g 3.1g
   アスパラガス 30g 0.5g
   ミニトマト 30g 0.4g
 にんじんのグラッセ  にんじん皮むき 40g 1.0g
 ほうれん草のお浸し  ほうれん草 40g 1.1g
 かぼちゃの煮物  かぼちゃ 70g 2.5g
 かぶの味噌汁  かぶの根皮付き 70g 1.1g
総量 350g 9.7


 ここに示した組み合わせは一例ですが、どのような組み合わせでも野菜350gだけで成人女性の目標量の18gに達することは難しいといえるでしょう。
 野菜だけでなく、食物繊維を多く含む食材の穀類、豆類、海藻類、きのこ類、芋・芋加工品、果物も組み合わせて食べることで、目標量に達することができるのです。

<若年、働き盛り世代に顕著な不足傾向>
 現在、日本人の食物繊維摂取目標量は、厚生労働省により成人男性で20g以上、成人女性は18g以上と定められています。摂取量はというと、2001年から2015年の食物繊維摂取量を国民健康・栄養調査の結果で見ると、不足の状態が続き、男女平均で約5 g不足しています。
さらに詳しく年齢別の摂取量を見ていくと、男女ともに18~29歳の若者世代、30~49歳の働き盛り世代の摂取量が少ないことがわかります。
 では、食物繊維の摂取不足が危惧されるのは、なぜなのでしょうか。食物繊維は水溶性食物繊維と不溶性食物繊維に大別されますが、水溶性食物繊維は、粘性により糖やコレステロールの吸収を抑え、主に糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病の予防に必要なことがわかっています。若年世代、働き盛り世代の食物繊維不足が続けば、生活習慣病予備軍につながりかねません。
 不溶性食物繊維は、水分を吸収し大きくふくらみ、便のかさを増やすことで腸の蠕動運動を促し、便意をもたらす働きがあります。食物繊維が不足すると腸壁に発がん物質を含む便や便の残渣が長く滞在するため、大腸がんを引き起こす原因になるといわれています。
 生活習慣病予防のためには、これまでの研究から1日24g以上の摂取が理想とみなされていますが、現状の摂取量とかけ離れているため、実現可能な数値として目標値が定められています。
「日本人の食事摂取基準(2015年版)」の1日の目標量は成人男性で20g以上(70歳以上は19g以上)、成人女性では18g以上(70歳以上では17g以上)ですが、ほとんどの年代で目標量を満たしていません。生活習慣病予防効果を期待するなら理想は1日24g以上とも見られているくらいですから、よほど極端な摂り方をしない限り、摂り過ぎる心配はありません。できるだけ多く摂るようにするとよいでしょう。(図-2参照)



図-2 日本人の年代別食物繊維の摂取量(g)


出典: 平成27年国民健康・栄養調査結果の概要より


 ところが、日本人の摂取量はむしろ減るばかり。特に若い世代で摂取量が少ない傾向にあります。これは、食が豊かになり、かつてよく食べられていた玄米や麦ごはんなどの摂取量が減ったことや、近年、ダイエットや「糖質制限」の流行などで主食を控える人が増えているのが一因と考えられます。
 図-2のグラフは年代ごとの食物繊維の摂取量を表しています。調査結果からは、食物繊維の摂取量は10~40代でかなり少ないことが分かります。また最も摂取量が多い60代でも目標量にわずかに達していません。10代から40代は摂取量が特に少なく、食物繊維は摂るのが本当に難しい栄養素と言えるのではないでしょうか。

<1日の摂取量は20~25gを目標に、さまざまな食品からバランスよく摂取>
 日本では食生活の欧米化に伴い、肉の消費量が増える一方、食物繊維の摂取量は大幅に減少しています。こうした食生活が腸内細菌のバランスに影響を与え、体調に変化を来すようにもなります。そうしたリスクを減らすには、食物繊維をたっぷり含んだ豆類や野菜類などをたくさん食べることが大事になります。特に「畑のお肉」とも言われる大豆をしっかり摂取することもお薦めです。大豆は食物繊維が豊富なだけでなく、タンパク質、脂質、炭水化物といった三大栄養素や女性ホルモンに似た働きをするイソフラボンなどを含んでおり、体にいいとされる食材の優等生といえます。また、大豆が原料のおからも、不溶性食物繊維を豊富に含んだ優れた食品です。大豆由来の良質なたんぱく質のほか、抗酸化ビタミンであるビタミンE、骨の形成に欠かせないカルシウムのほか、カリウム、マグネシウムも若干含んでいますから、食物繊維不足の解消と食生活の底上げに役立つ食品だといえます。一度に大量に摂るのではなく、毎日適量を摂る習慣をつけることが、食物繊維不足の解消には有効です。
 発酵食品ももっと食べるようにするといいでしょう。漬物、みそ、鰹節などはビタミンやミネラルなどの栄養素も豊富で、腸内細菌のバランスを保ち、健康を維持するために欠かすことができない食べ物です。
 日本人の食物繊維の平均摂取量は約14gと少ないので、今の倍の量を摂るように意識しましょう。食物繊維の1日の摂取量は20~25gが目標です。しかし、この量を確保することは、現代の食生活ではなかなか難しいことです。食物繊維の含有量の多い食品には、寒天、干しひじき、干しシイタケ、青ノリ、かんぴょう、干しノリなどがありますが、これらの食品は1回にそれほど多くは食べられません。日常の食生活において食べる機会が多く、しかも比較的食べる量が多いことから食物繊維の供給源として期待できるのが、穀類、芋類、豆類、野菜類、果実類、海藻類などです。
 主食である穀物を1日3度の食事できちんと摂り、できれば白米には雑穀を混ぜるとか、パンならライ麦パンや全粒粉パンにする、野菜も根菜、葉菜などを取り混ぜて食べるような工夫が望まれます。それにはやはり和食が好都合でしょう。豆類や芋類、海藻類も合いますし、食事全体の栄養バランスも整えやすくなる利点もあります。

<食物繊維は、サプリでなく食品から摂りましょう!>
 不足している食物繊維約5gはどのように摂ればよいでしょう。まず心掛けたいのは、サプリメントではなく、“食物から摂る”ということです。食物であれば、食物繊維以外の栄養成分も摂ることができ、自然に栄養バランスを底上げできるからです。
 食物繊維は種類ごとにその生理作用が異なりますので、いろいろな食品から多種類のものを摂るのが理想です。しかも天然の食品から摂りたいものです。天然の食品ならば、食物繊維以外の栄養素も同時に摂取できます。健康を維持するためには、なんといってもバランスのとれた栄養が基本であることは言うまでもないことです。



▲このページの上部へ
tml>