新型コロナウイルス感染症と歯科治療について

新型コロナウイルスの新規感染者が減少傾向にあり、緊急事態宣言が解除されたとはいえ、県民の皆様には不安な日々をお過ごしのことと存じます。新型コロナウイルスへの感染の予防のために「手洗い・うがい・三密をさける」ことは非常に重要ですが、意外と盲点となっている「おくちのケアの重要性」についてお知らせできればと思います。
 

おくちのケアの重要性について

(1)新型コロナウイルスへの感染予防
歯周病菌が増加し、歯周病菌が出す酵素により口の中の粘膜が破壊され、ウイルスに感染しやすくなります。コロナウイルスと構造の類似したインフルエンザウイルスでは、歯科衛生士による口腔ケアによりインフルエンザの発症が10分の1に抑制されたという報告もあります。

(2)糖尿病や動脈硬化などの持病の発生や悪化、肺炎の重症化の防止
歯周病菌が血流にのって全身に拡がり、糖尿病や動脈硬化などの持病を発生させたり悪化させたりすることが近年分かってきています。持病がある方はない方と比べて、万が一、新型コロナウイルスに感染した際の重症化のリスクが高いといわれています。また、おくちの中が不衛生ですと肺炎が重症化しやすくなる可能性があります。

(3)体力・免疫力の維持
むし歯がある、義歯があわないなどの理由で、しっかりと食事がとれないことにより低栄養状態となり、体力・免疫力が落ちてしまいます。新型コロナウイルスに負けない健康状態を保つという意味でも、歯科治療を滞らせることはよくないと考えます。
  

歯科医院への受診による感染リスクは高くありません

(1)十分な感染予防策を講じています
歯科ではこれまでもB型・C型肝炎ウイルス、ノロウイルス、はしかや風疹などの感染を引き起こす可能性のあるウイルスや細菌への曝露を防ぐために、フェイスシールド等の防護具の着用、また患者さんごとにグローブの交換、医療器材の滅菌や消毒をしっかりと行っています。また、その作業工程も区域に分けて汚染が広がらないように十分に配慮しております。

(2)エアロゾルについて
歯を削る際に出る水しぶき(エアロゾル)によりウイルスが医院内に撒き散らされて、これを浴びることによりウイルスに感染するのではないかと心配されているかもしれません。このエアロゾルの70%は器具から出た水で、残りが削片や体液であり、これに含まれるウイルスの量はくしゃみや咳により飛沫する唾液に含まれるウイルス量と比べて非常に少なく、エアロゾルの飛沫はごく狭いエリアに限定されるため、歯科医院を受診されることによるウイルスへの曝露は多くはありません。また、歯科医院内では待合室や治療室での人口密度をできるだけ小さくし、換気を十分に行い、患者さん間での感染や医院内の感染拡大が起きないよう、細心の注意を払っております。これらのことから、歯科治療による新型コロナウイルスの感染リスクは他の社会活動と比較して決して高くはありません。
 

最後に

おくちの衛生状態を維持し食べる機能を整えておくことは、新型コロナウイルス対策と直結しており、万が一感染したとしても発症したり重症化しないような免疫力を維持した体の状態を保つために非常に重要と考えます。歯科医院では感染制御のプロフェッショナルとして、盤石な感染予防体制を実施しているので安心して受診してください。しかしながら、現在の社会情勢のなかで皆様が不安を感じられ歯科医院への受診を躊躇されることは当然のことと思いますので、これらのことを知られてもご不安なようであれば、かかりつけ歯科医とご相談いただき、治療を延期されることも決して否定されるものではありません。

2020年5月18日
一般社団法人広島県歯科医師会
新型コロナウイルス感染症対策本部

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